日本人の虫歯の数は、年々減少しています。30年前と比較すると、その数は劇的に減っています。
とはいえ、まだまだ虫歯にかかるリスクはありますし、予防措置を講じておくことは不可欠です。
そこで知っておきたいのが、虫歯にかかる原因ですね。とくに、一般的な病気と同様、「虫歯は遺伝するのか」という点に着目して、虫歯の原因を考えていきたいと思います。
虫歯は遺伝しない
結論からいうと、虫歯は遺伝しません。虫歯の原因は、歯質、細菌、食事、時間といった4つの要素が絡み合ったものです。細菌は生後に感染するものですし、食事や時間も生活習慣に由来する要素といえます。
ただ、歯質に関しては唯一、親からの遺伝子が反映される部分ではありますが、エナメル質の石灰化の度合いなどは、出生後の環境で大きく変化します。ですから、虫歯という病気を遺伝と関連付けることは難しいかと思います。
唾液感染する虫歯菌
虫歯という病気は、細菌に感染することから始まります。シンプルにいえば、風邪と同じですね。
原因となる細菌が存在しなければ、そもそも病気を発症しないのです。そんな虫歯菌は、主に唾液によって感染します。
虫歯の初期感染は、母子間で起こることが多いです。子供の口腔内には、もともと虫歯菌が生息していません。
なぜなら、虫歯菌の住処となる歯が存在しないからです。そこで乳歯が生え始めると、虫歯菌が住み着く環境が整うことになります。この時、母親が虫歯菌に感染していたら、子供へと感染が広がる可能性が高いです。母子間ではタオルを共有したり、口移しで食べ物を与えたりする習慣があるからです。
母子感染を防ぐには
虫歯菌の母子感染を防ぐのであれば、唾液を介したコミュニケーションをできるだけ控えることをお勧めします。具体的には、口づけなどのスキンシップを控えることはもちろん、唾液が付着する日用品は、それぞれ別のものを使用するのが望ましいです。ただ、こうした母子間のコミュニケーションは、愛情を伝えるという大事な役割も担っています。それだけに、口づけや口移しといったスキンシップを制限することに抵抗がある方も多いかと思います。そこで知っておいていただきたいのが「感染の窓」という概念です。
感染の窓とは
子供には虫歯菌に感染しやすい時期というものがあります。それは生後19ヵ月から31ヵ月の間で、専門的には「感染の窓」と呼ばれています。この期間、子供の歯や歯列はとても不安定な状態にあるため、虫歯菌が感染しやすいのです。ですから、感染の窓の12ヵ月だけでも、唾液を介したコミュニケーションを控えるだけで大きな効果が現れます。この期間を過ぎると、虫歯菌への感染リスクが減少します。
ミュータンス菌の数は隠れたリスク
多くの人の口腔内には、虫歯菌が常在しています。けれども、そのほとんどが今現在、虫歯になっていません。それは、虫歯菌の数が少ないからです。虫歯という病気はある意味とても単純で、その数が多くなれば自ずと虫歯の発症リスクも高まります。
とくに注意すべきなのはミュータンスレンサ球菌です。実は虫歯には幾つかの細菌が関与しているのですが、始めに虫歯を引き起こすのは、このミュータンスレンサ球菌なのです。ですから、虫歯のリスクを知るうえで、口腔内にミュータンスレンサ球菌がどれだけ生息しているかは重要な指標となります。ちなみに、口腔内の虫歯菌は、唾液検査などで調べることが可能です。