通常口の中は中性に保たれている
私たちの歯はエナメル質というとても硬い組織で覆われています。
骨よりも硬いのですが、酸による刺激にはとても弱い性質を持っています。
これは、歯が酸性環境に晒されると歯の表面からカルシウムやリンが溶け出してしまうためです。
ただ、私たちの口腔内のpHは通常、中性に保たれています。
これは唾液の緩衝作用によるもので、食事によって口腔内が急激に酸性に傾いても30~40分経過すると中性へと戻っていきます。
唾液の力によって酸が中和されるためです。
ですから食事によって歯質の脱灰が起こったとしても、唾液中のカルシウムやリンが再石灰化を促すため、歯の表面のエナメル質では均衡が保たれることとなります。
つまり、口腔内のpHの均衡が崩れた時が要注意なのです。
飲食の回数は虫歯を増加させる原因
口腔内が酸性に傾くと歯質の脱灰が起こりますが、どういった時にそのような変化が起こっているのか気になるかとかと思います。
実は普段私たちが何気なく口にしている飲み物や食べ物によって、口腔内は酸性へと急激に大きく傾きます。ここで次のグラフをご覧ください。
これはステファンカーブと呼ばれるグラフで、グルコース(糖質)溶液で口をゆすいだ後の歯垢のpH変化を記録したものです。
洗口して数分も経たないうちにpHが急激に下がっているのがわかります。
その後、元のpHに戻るまでに数十分を要しているのも読み取れるかと思います。
つまり、何かを飲んだり食べたりする度に口腔内ではこのような劇的な変化が起こっているのです。
ですから、1日の中で飲食をする機会が頻繁にあるとお口の中が酸性になっている時間が長くなり、虫歯もできやすくなるのです。
また、長時間だらだらと飲食することは口の中が慢性的に酸性状態となるため、虫歯のリスクも高まるといえます。
虫歯を誘発しやすい食べ物・飲み物
粘着性の高い食べ物は口腔内に残りやすいため虫歯を誘発しやすいといえます。
また、糖濃度の高い食べ物は虫歯菌による酸産生や虫歯の進行を増長させますので、注意が必要です。
具体的には、飴、ドライフルーツ、クッキー、チョコレート、ポテトチップス、おせんべいなどの食品が当てはまります。
飲み物に関しては、炭酸飲料、フルーツジュース、砂糖入りの缶コーヒー、ミルクティー、スポーツドリンクなどが該当します。
ただ、これらの食品を決して食べてはいけないということではありません。
「食」は人生の楽しみの一つでしょう。
「飲食の回数」と「だらだら食べ」が虫歯の原因を増長しますので、それを踏まえた上で、楽しい食生活を送りましょう。